紫薇 仲合、同盟会話
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仲合物語
幽冥の奥
私は一人で暗闇の中を探し続け、顔を上げると、
そこにあったのは無限の幽暗空虚だった
私は暗闇の中でもがき、窒息しそうになった。
この孤独な世界では誰も私を救うことが出来ない。
悪夢らか目覚めると、すでに夜中だった。
服を着て起きると静かに庭へ向かった。
予想通り、そこには紫薇がいた。
この男は私たちの仲間になってから誰とも付き合うつもりはないようだ。
いつも一人でいるし、例え最低限の人付き合いでさえも嫌がる。
紫薇:悪夢でも見たのか。
私に聞いているようだが、
言葉からは一切の心配は感じられなかった。
私は紫薇のそばに座った。
銀色の月光で紫薇の長い髪が映え、
まるでこの世すべてが薄いベールに包まれているようだ。
なぜかこの人を見ていると、なんだか懐かしく思う。
遠い昔、出逢ったような気がする。
けれどいくら思い出そうとしても、
この人に関する思い出がない。
私に、過去の記憶などない。
夢剣:…私は眠るとすぐ夢を見る。
夢の中の私は何かを追い求めているようで、何かから逃げているようだ。
無剣:夢の中は無限の暗闇が広がっており、
まるで終わりがないような…
無剣:私・・・自分がこのまま夢の奥に沈み、
もう出られないんじゃないかと心配しているの。
紫薇:それはただ君の心の底にある恐怖だ。
紫薇は淡々と私を一瞥した。
私の夢はただ…心の底にある恐怖?
無剣:ずっと失くした記憶だと思っていた。
紫薇:ほう?
それなら、なでここで無意味な会話を続けているのか?
夢でそのなくした記憶を探したほうがいいんじゃないか?
無剣:俺は……
私は紫薇に反論したかったが、無力にも下唇を軽くかんだまま、言葉が出てこなかった。何を言っても自分がただの臆病者だと思われるからだ。
紫薇:君は求めているものから逃げている。
君が恐怖だと感じているものはまさに君が取り戻したい過去だ。
紫薇:あきらめろ・・・君は過去の自分から、その過去全てから逃げている。
無剣:貴方も私と同じじゃない、
だからそうやって自分を閉じ込めて、他人を拒絶する。
紫薇の顔色が変わった。
紫薇:そうだな。他人に自分の過去を話す必要はない。
紫薇はこちらを振り帰らず去っていった。
遠ざかっていく姿と残された言動は月光のように冷たい。
無涯の苦海
夢の中の全てはぼやけている。
とても深い水底からこの世を見ているようだ、
いつからか、私の夢は少しずつ変わっている。
私は一人で暗く冷たい海底に囚われて、遠くに人影がぼんやりと見える。
誰か助けて。
助けを呼ぼうとすると、一気に口に冷たい海水が入ってくる。
暗く苦い。
私はもがき始めた。
無剣:このままじゃ…
誰か、助けて・・・
いつも通り、私は庭の中でその人を見つけた。
月の人に立つその男の人は全身銀色に染まったように美しい。
こんな夜、私と目の前の人との二人きりの世界だと勘違いしてしまう。
紫薇:また無限の暗闇の中から逃げたのか?
無剣:誰か…私をこの暗闇から連れ出して。
紫薇:フ…願いを他人に託すなんて、
哀れな人だな。
紫薇:この世で君を救える者はいない。救えるのは君自身だ。
紫薇:だが、俺は嫌いだ、この性格が
紫薇は急に私に近づいてきて、
彼の吐息が私の耳元の髪を揺らすほど近くに来た。
少し懐かしい匂いがした。
初めてこんな近くにいるけれど、
なぜかこの人に対して涙が出てくるほど懐かしく感じる。
紫薇:貴方はすべてになれるのに、すべてを成せるのに…
紫薇:貴方は俺の求める人になれるのに…
その人は軽く頭を振り、口に出してはいないけれど、
明らかに失望しているのが分かる。
紫薇:あなたはそうやって他人の助けに頼る考え方を抱いたまま、ずっと逃げ続ければいい。
その冷たい声は水の波紋のように、夜に揺らいで消えていく。
私は心に傷を負った。
夢の彼方
また夢…
ずっと、ずっと、この夢を見る。
冥海のように無限に広がり終わりがない。
けれど私の求める人は夢の中に出てきたことはない。
この深淵にある迷いに満ちた夢で私のそばにいるのは、
永遠の彼方にぼんやり映った人影と無限の痛み、あとは孤独。
目覚めよう。目覚めたら、こんなに苦しむことはない。
けどこのまま目覚めたら、自分が恐怖に屈したことになる。
私は、臆病者じゃない。
私は手を握り締め、自分にそう言い聞かせた。
どんなに恋しく、辛く、怖い記憶でも…
すべては私の記憶の一部、私自身の一部。
過去を受け入れることは、自分を受け入れることだ。
深海を越え、彼方の薄い人影に触れる瞬間に、
一縷の煙霧が私の目に映った。その姿は…
その瞬間、私は震えた。
夢は泡のように砕け散った。私は夢の中から目覚めると、
この部屋が寂しさに満ち溢れていることに気づいた。
無剣:あと少し…
夢の彼方の薄い人影に触れることが出来たら、
欠けた記憶の一部を取り戻されるような気がした。
私は服を着て月下の庭へ向かった。
紫薇のひっそりとした姿は、その時の私の唯一の慰めだった。
無剣:どうして貴方は過去のすべてに平然でいられるの
・・・もがいたり、苦しんだりしたことはなかったの?
無剣:少しの迷いもなかったというの?
紫薇は淡々と私を一瞥したあと、月に向かって誰かに敬意を払うように、
手に持った盃を少し上へ上げてその酒を飲み干した。
紫薇:この世に不可能なことはない。
不可能だという人はまだ窮地に追い詰められていないだけだ。
紫薇が再び酒を盃に注いで満たし、持ち上げた時、
私はそれを奪って、一気に飲み干したせいで、淡い味の酒は炎のように喉を燃やしている。
無剣:ゴホゴホ…
紫薇は薄い笑みを浮かべたが、口から出た言葉は冷たく無情なものだった。
紫薇:他の逃げ道がなくなった時、目の前が唯一の選択だ。
政界でも、不正解でも進むしかない。
紫薇:しかし・・・君のように人々に寵愛され、守られ、
人々の背後に隠れ、永遠に手を汚す必要のない人間には理解できないだろう。
無剣:私も過去のすべてを受け入れたいけれど、
記憶の奥深くにある影は蛇のように私にまとわりつく。
紫薇:フ…それはただの言い訳だ。
蛇のように君にまとわりつきようが、完全に振り切ることができないなら、
それを受け入れるしかない。
紫薇:受け入れたら、蛇にも愛嬌があることに気づく。
無剣:受け入れたらどうなるの?それで満足するの?
貴方は自分の過去に怯えるような人でしかない!
紫薇:もういい!君には関係ない!
紫薇:私の過去に触れるな、分かっても何にもならない。
紫薇の後ろ姿は夜に溶けて消えていった。
道は何処
紫薇:くだらないことをいちいち聞いてる暇はない……
無剣:ありがとう、そして…ごめんと言いたかっただけ。
紫薇:ほぉ?
無剣:ごめん・・・ひどいこと言ってしまったけれど、わざとではないの。
紫薇:フ、まさか…俺に同情しているのか?
この瞬間、目の前のこの男はいかに傲慢だということをよく理解した。
すべての同情は侮辱と同じくらい傲慢だ。
紫薇:同情と涙のような安物はいらない。
無剣:ただ、誰かに何かを説明するために苦しむのはもう必要ないと思った。
紫薇は私の話を断った。
紫薇:もう誰かに証明する必要はない。
紫薇:力は心にある。何かで増えたり、減ったりしない。
紫薇:真の強者は元々証明する必要はない。
紫薇:無能の輩こそ、数々の手段で自分を証明する。
私は静かに紫薇の話を聞いた。
今の私はまだ紫薇の心に拒まれているが、
でもあの夢が示したように、
少しだけでいい、毎日少しずつでも彼に近づくことができるのなら。
いつか彼の心へと繋ぐ道を見つけることが出来る。
同盟会話
○○の紫薇:この手に軟剣があれば何人たりも恐るるに足りぬ。
○○の紫薇:主人を侮辱する輩がいれば、俺がそいつを消してくれよう。
○○の紫薇:だがその前に、絶望を味わわせてやるのが先だな。ふふ。
○○の紫薇:木剣が失敗した以上、もう彼に付き合う必要はない。
○○の紫薇:主人は生きている。…なんとなく分かる。
○○の紫薇:言うだけ無駄だ。邪魔するものは殺す。
○○の紫薇:過ぎ去った日々にふけっているのか?
○○の紫薇:ふん、当然だろう。
○○の紫薇:今は…お前とは関係のない話だ。
判詞
風邪に漂う紫の煙に星が揺れる
色褪せた古い記憶を谷に葬り捨て
寂しい微光に照らされ夜の蛍と顔を合わせる
菫色の裾が月光を帯び
剣の切っ先を洗っても生臭さが残る
人情が長くも紙のように薄く
たった一人で冥界の鬼を友にする
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